数字でみる医療
トラベルドクターの伊藤れいやです。
突然ですが問題です。
この写真は、どこだと思いますか?
正解は、「病室の天井」です。
入院の経験がある人にとっては、見覚えがあったかもしれませんね。
逆に医療現場で働く人にとっては、この視点から病室をみるのは案外少ないのではないでしょうか。
かつては最期を「家」で迎えるということは、ごく自然でした。
しかし現在「医療機関等」で亡くなる割合は“75%”で、
年に100万人もの人が、医療機関等で最期を迎えます。
逆に「自宅」で最期まで過ごせる人は、わずか”13%”と、
最期を迎える場所は、ここ数十年で逆転しています。
つまり、この天井の写真は
75%の確率で、“あなたが最期にみる景色”になるのです。
近年では“在宅診療”の大切さが注目されはじめ、自宅で過ごせす人は少しずつ増えてきています。
しかし医療機関等で最期を迎える人は、まだまだ多いのが現状です。
私は医師として、病院で患者さんを看取ることは非常に悲しくなります。
目の前にいる患者さんは、これまでの人生できっと多くの経験をしてきたはずです。
にも関わらず、生まれ育った自分の家ではなく、ほとんど飾り気のない“病室”で幕を閉じるということは、医療者として複雑な心境になります。
自宅に帰ることがまだまだ容易ではない中、
「旅行」となると、難易度はさらに上がります。
観光庁のデータによると、
80歳以上の国内旅行する人の割合は“41.1%”と、
他の年代に比べると半分程度に減っています。
さらに海外旅行ともなると、わずか“2.2%”にまで減ってしまいます。
他にも、“要介護者”の旅行頻度は、要介護になる前と比べて“5分の1”に減少してしまうなど、病気を抱えながら旅行できる人は非常に限られています。
なぜ、旅行ができないのでしょうか?
原因としては、多くの人が「健康上の理由」つまりは「病気」を理由に諦めているからです。
これには、病気を抱えた人が旅行をするためのサポートをする環境が整っていないというのも大きな背景です。
「旅行がしたい」という気持ちがあっても実現できない原因は、多くの理由が挙げられます。
この件についても今後、詳しくお話していきたいと思います。
ちなみに、もし自分が同じ立場だったら、
最期に見る景色は、自分の好きな場所で迎えたいと考えています。
“自宅 or 病院”の2択ではなく、
綺麗な景色のみえる場所や、春の風を感じながら桜を眺めたり、温泉に浸かりながらだったり。
もし、過ごしたい場所を自分の意思で選べるようになれば、人生の選択肢がもっと増えると信じています。
自分の大切な人も、そうであってほしいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
今を生きるあなたへ
旅行医 伊藤 玲哉